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第16回:五感刺激の安眠レシピ~脳ストレスを解消する眠り~|聴覚・嗅覚・味覚の相互作用|アロマ×音楽療法×食事で健康に

更新日:2022年6月30日

極上の睡眠~トップ・スペシャリストによる快眠コラム


連載第16回:トップ・スペシャリスト


板東浩

医学博士

日本統合医療学会四国支部長

徳島県糖質制限研究会代表



 



いま、話題になっているのが「アロマ」です。

疲れたあなたの心身を癒したり、明日への活力を取り戻したりしますね。

治療に使われるため、アロマセラピー(aromatherapy)と呼ばれています。


そもそもaromaとは19世紀にギリシャ語から英語に転用された言葉でした。

甘いスパイス(sweet spice)を意味し、良い香りや芳香、雰囲気、風格、気品などの概念も含まれているとのこと。

だから、アロマと聞くだけで何となく気持ちよく感じませんか?


今回のコラムでは、五感の相互作用―とくに聴覚・嗅覚・味覚について、詳しく解説します。



-目次-

  1. 「おいしい」=味覚+嗅覚? ~五感の相互作用

  2. 聴覚で癒す “音楽療法” ~五感の記憶を呼び覚ます音楽の力

  3. アロマセラピー×音楽療法 ~2つをあわせることでより健やかに

  4. 音楽が食べ物の味を変える!? ~「音の調味料」についてのおもしろい研究


 

1.「おいしい」=味覚+嗅覚?

~アロマや食事を楽しめるのは、五感の働きと相互作用のおかげ


ヒトには感覚器官として五感があります。

あなたは、その5つをスラスラと言えますか。


えっと…?


それでは、瞬時に覚えるコツを伝授しましょう。

しゃべりながら、右手を動かして触れてみてください。


月と太陽

①聴覚(右耳)

②視覚(右眼)

③嗅覚(鼻)

④味覚(舌)

⑤触覚(親指と人差し指を擦り合わせる)


それでは目を閉じてもういちど復唱。

もう覚えましたね。




「おいしい」=味覚+嗅覚


ごちそうを食べたときの「おいしい」という感覚は、

五感の中で、③嗅覚④味覚両者が合わさって生まれます。


私たちがウドンやソバを味わえるのは、

息を吸いながら食べる=「啜(すす)る」という、日本人の驚くべき特技のためかもしれません。


さて、嗅覚味覚という2つの感覚は、アロマにも深く関わってきます。



 

2.聴覚で癒す ”音楽療法”

~五感の記憶を呼び覚ます音楽の力




3つの意識レベルに働きかける


ヒトが有する五感(five senses)の中で、

①聴覚に関わる治療や施術が音楽療法(music therapy)です。


実は、音楽には大きなパワーが備わっており、私たちのあらゆる意識レベルに直接働きかけます。

適切な選曲をすることで、われわれに安らぎと深い眠りをもたらしてくれます。

音楽と3つの意識レベルについては、以下で詳しく説明しています。

コラム第1回:好きな音楽を活用して心身を健やかに~音楽が睡眠にもたらす効果~





聴覚から五感へ作用する


また、音楽は五感の記憶を呼び覚まし、刺激します。


好きな音楽や馴染みの歌、懐かしい歌を聴くと、青春の頃に見たり聞いたり、美味しいものを食べたりした感覚が蘇ってきたりするものです。

あなたはそのような経験や思い出はありませんか?



◆音楽が刺激する記憶の例


聴覚: 虫の音,鳴き声,鐘の音

視覚: 景色,草花,絵や写真

嗅覚: 花,果物,食物の香り

味覚: 旬の食物,桜餅,秋刀魚

触覚: 季節の花や物,どんぐり


 

3.アロマセラピー×音楽療法

~2つをあわせることでより健やかに



筆者は今まで、全人的医療(※)を目指すプライマリケア医学統合医療に携わってきました。

(※) 全人的医療とは…特定の部位や疾患に限定せず、患者さんの心理社会的側面なども含めて幅広く考慮しながら、個々人に合った総合的な疾病予防診断・治療を行う医療のことです。


その中で、基本的に大切なのは、適切な生活習慣です。

食事・運動・睡眠はほぼ規則的に保ちたいもの。

心身が疲れたら、あなたにぴったりの方法で元気、活気、やる気を取り戻すような自己管理が推奨されます。




注目の【アロマセラピー×音楽療法】


いま統合医療で注目されているのが、アロマ音楽療法併せる方法です。


代表的なアロマには、ラベンダーペパーミントが挙げられます。


良い香りを嗅ぐと、嗅神経から信号が古く深い脳まで伝わることに。

ここは生物が進化する以前、太古の昔から生物で原始脳に存在する部位です。

本能や情動に関わるため、心の奥深いレベルから、あなたの心身全体を癒してくれると考えられます。


このような性質を持つアロマを、意識の深いレベルに働きかける音楽あわせて用いることで、リラックス効果がより高まることが期待されます。


ヒトの深い脳や情動に関わる脳神経(No.1-12)には、嗅神経(No.1)と内耳神経(No.8)が含まれます。

アロマと音楽がこれらの部位に働きかけることで、副交感神経が優位となり、落ち着いてリラックスできる心身の状態となるのです。



◆音楽×アロマ~安眠レシピ


仕事で疲れて帰宅した日には、ぜひ以下のレシピを試してみてください。


  • ラベンダーのアロマオイル

  • イージーリスニングのBGM


シャワーを浴びて一段落し、落ち着ける空間に移動してから、

アロマと音楽に身をまかせることで、脳の深い部位への癒しを得ることができるでしょう。



◆おすすめのイージーリンスニング

アロマセラピスト・原田瞳先生監修の音楽。



 

4.音楽が食べ物の味を変える!? 

~「音の調味料」についてのおもしろい研究



誰もが、心を清らかにするような音楽の空間に包まれ、美味しい料理に舌鼓を打ちたいと思いますね。


この領域で研究が進んできました。

馴染みの曲や好みの曲を聞きながら、ご馳走をも味える環境や条件を設定し、聴覚や味覚、嗅覚を同時に刺激してみるという試みです。


音が味に影響を及ぼす現象は、専門家のあいだで「Sonic Seasoning(音の調味料)」と呼ばれています。





研究①音楽がメニューの選択に影響する


いろいろなレストランで食事をすると、適切な音楽がBGMとして流れていますね。

ここで逆に考えてみましょう。

もしBGMがなければ、隣の席の会話が聞こえてきてしまいますね。


不適切なBGMとはどんなものでしょうか? 

たとえば…


  • ベートーベンの交響曲→重た過ぎます

  • 不協和音が連続するロックンロール→気分がすぐれない

  • 絶叫するオペラ歌手→落ち着かない

  • 失恋がテーマの演歌→感情移入してしまう


などなど。

ちょっと笑ってしまいますが、これらの理由をどう思いますか。


結局、BGMとは無意識のレベルで、人の心にあまり影響せず、邪魔にならない程度が大切といえましょう。


さて、音楽は無意識に働きかけるがゆえに、

BGMがメニューの選択に影響を与えることがあります。

ドイツ音楽が流れていればビールを、フランス音楽が流れていればワインを注文する傾向があるとされています。


あなたの場合はいかがでしょうか?






研究②音が味覚を刺激する


英国には、ミシュランの三ツ星で、超有名なレストランThe Fat Duckがあります。

オーナーのBlumenthal氏は、科学的な調理を行い、Oxford大学との共同研究によって音楽が味覚を刺激することを発見しました。


たとえば、牡蠣(カキ)」を食べる際に…


①牛や馬の鳴き声を聴く場合

②波の音を聴く場合


で調査すると、②波の音を聴く場合に味が濃く、塩気を強く感じられるそうです。



ここで、有名な創作料理を紹介しましょう。


「海の音色(Sound of the Sea)」


波の音を聴きながら食べることで味覚が刺激され、貝や海藻など海の食材の味が引き立つのだそうです。

もし、英国に行くことがありましたら、予約して訪れてみてはいかがでしょうか?




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このように、聴覚が味覚に影響をおよぼす現象―「Sonic Seasoning(音の調味料)」について、近年では様々な研究が進んでいます。


音楽療法を基盤として、アロマセラピーをプラスし、これらの調査を展開させていくと、ストレスの軽減や健康感、幸福感の充実につながっていくことでしょう。



 

極上の睡眠~トップ・スペシャリストによる快眠コラム

連載第16回は、板東浩先生による「五感刺激で脳ストレス解消!|聴覚・嗅覚・味覚の相互作用|アロマ×音楽療法×食事で健康に」でした。



1.「おいしい」=味覚+嗅覚? ~五感の相互作用 
2.聴覚で癒す “音楽療法” ~五感の記憶を呼び覚ます音楽の力 
3.アロマセラピー×音楽療法 ~2つをあわせることでより健やかに 
4.音楽が食べ物の味を変える!? ~「音の調味料」についてのおもしろい研究 


内容を簡潔にまとめると、以下のとおりです。

ぜひ、毎日の睡眠に役立ててください。

  • 人の五感は互いに影響しあう

  • 音楽とアロマなど、複数の刺激をうまく組み合わせると、相乗効果で健康や睡眠に良い影響をあたえる


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【トップ・スペシャリスト プロフィール】


板東浩


医学博士 日本統合医療学会四国支部長

徳島県糖質制限研究会代表 ​ 徳島大学卒業、ECFMG資格取得後、米国でfamily medicineを臨床研修。専門領域はアンチエイジング、糖質制限、音楽療法、スポーツ医学など。アイススケート選手として国体出場(1999 ~ 2003)。第9回日本音楽療法学会大会長(2009)。第3回ヨーロッパ国際ピアノコンクール(EIPIC)in Japan銀賞(2012)。日本プライマリ・ケア連合学会大会長(2017、高松)。 糖尿病関係の英文医学雑誌4誌のEditor-in-Chief(編集長,2022)。著書30冊以上、印刷物2,000以上、英語論文300以上。「新老人の会」徳島代表。 公式サイト:https://pianomed.org/


 

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