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第6回:睡眠と覚醒のメカニズム(3)~3つのシステム―メラトニン | オレキシン | 恒常性調節系~

更新日:2022年6月30日

極上の睡眠~トップ・スペシャリストによる快眠コラム


連載第6回:トップ・スペシャリスト


板東浩

医学博士

日本統合医療学会四国支部長

徳島県糖質制限研究会代表



 


あなたは、気持ちよく寝られたらいいな、と思いませんか? 

本シリーズでは、快眠のコツについてお話しています。

その背景として、睡眠と覚醒はどのような仕組みになっているのでしょうか。

4月のコラムでは

①【松果体】と【メラトニン】の作用について

5月には

②ホルモン【オレキシン】と眠気の関係について

触れました。

まず、簡単にこれらの復習をしたいと思います。



-目次-

  1. メラトニンのメカニズム ~メラトニン 睡眠リズムを 調節し

  2. オレキシンのメカニズム ~オレキシン シャキッと脳を 覚醒し

  3. もうひとつの睡眠・覚醒システム ~実際は 3つのシステム 調整系

  4. 良い眠りを得るために ~両ホルモン 協力しあって 良いリズム


 

1.メラトニンのメカニズム  ~メラトニン 睡眠リズムを 調節し


月と太陽

私たちの頭の中には、小さな「松果体」があり、 ここから「メラトニン」というホルモンが分泌されています。 その血中濃度を調べますと、夜の20-22時ごろから急上昇して、身体にある体内時計を調節してくれているのです。 つまり身体を昼間は活動体制に、夜間は休息体制に保つ役割を担うのです。


「メラトニン」…人間の体内リズムを24時間周期に調整してくれる


人間は地球上で24時間の周期で生活していますね。 もし、人を時計がない真っ暗な洞窟で何週間も生活させると、そのリズムは24時間ではなく25時間となるのです。この現象を、フリーラン(free run)と呼びます。 ​ 実は、メラトニンが調節して、24時間に合わせてくれているというワケ。





症例カルテ


睡眠・覚醒の周期が24時間から25時間にずれてしまう


著者が以前に担当した患者は、睡眠・覚醒リズムが25時間の周期でした。 図をご覧ください。






図124時間の睡眠リズムですが、図225時間の睡眠リズムのため、 毎日1時間ずつ、睡眠覚醒リズムがずれていることがわかります。 これは、専門用語で難しいのですが、「非24時間睡眠覚醒症候群」という状態なのです。



 

2.オレキシンのメカニズム ~オレキシン シャキッと脳を 覚醒し



大脳下部には、視床下部という大切な領域があります。

食欲や、体温、睡眠、自律神経の中枢となります。

ここから「オレキシン」というホルモンが分泌されており、睡眠と覚醒の働きに深く関わっています。



映画でたとえると、組織からの指令が録音されたテープレコーダーで

007に届けられる状況と同じです。

その指令はすぐに消えてしまいますが、受け取った007はシャキッとして覚醒

多角的に頭を働かせて仕事をこなすというワケ。

​もし、指令がこなければ、刺激がなく眠ってしまうかもしれません。




そのオレキシンを刺激させる3大要素があります。

①栄養状態で空腹という刺激

②体内時計で朝になったという刺激

③心理状態で気持ちが高ぶったという刺激

これらの刺激を受けるとオレキシン分泌が増えて、覚醒の状態を保持するのです。

下図のように、ヤジロベエのようにうまくバランスを保っています。




逆にオレキシン分泌が減ると、覚醒→睡眠の方向に進むことに。

これに関連して、誰もが日常で経験していることがあるのです。

美味しいご馳走を食べ過ぎると、その後眠気が襲ってきますね。

これはオレキシンの仕業ともいえましょう。

食事に含まれる糖質によって血糖値が上昇すると、脳脊髄液の中のグルコース濃度も上昇することに。


すると、オレキシンを作動させるニューロンの活動が一時的に弱まるため、

眠たくなってしまうというワケです。






 

3.もうひとつの睡眠・覚醒システム

~実際は 3つのシステム 調整系


ここまで、睡眠と覚醒について、

①体内時計系のメラトニン

②覚醒調節計のオレキシン系

についてお話してきました。

もう一つ、

③恒常性調節系

というホルモンも関わっています。



少々難しいことで恐縮ですが、

睡眠中枢をコントロールしている「GABA作動性ニューロン」が働いているのです。

3者の関係性を示した図をご覧ください。



このように、睡眠と覚醒が切りかわるときには、 これらのホルモンがバランスを保ちながら誘導してくれています。 ​ 良い夢をみるように、快眠に誘ってくれているといえましょう。





子守歌のような曲として、ブラームスが作曲した「眠りの精」が知られてきました。 昔から、眠りの妖精が砂を子供の眼にかけると、快眠に誘われるとされてきます。 心を癒す音楽に心身を抱かれて、良い夢がみられるといいですね。


 

4.良い眠りを得るために

~両ホルモン 協力しあって 良いリズム


みなさまの日々の生活で、昼間に活動し、夜間にぐっすり寝ることができるのも、

これらのメカニズムが働いてくれているからです。

ただ、現代社会では、あまりにも多くのストレスが降りかかってくるため、

多くの人々が睡眠障害で悩んでいます。

本来は、規則正しい生活習慣として適切な食事・運動・睡眠を日々続けるのが理想ですが、

現実にはそう簡単ではありません。

必要な場合には、関連する薬剤も使われているので、活用できます。




しかし、心身ともに健やかに働くという点で、

音楽という薬「音薬」をうまく活用するのがベストといえましょう。


※音楽が眠りにもたらす効果については、第1回コラムを参照してください。



 

極上の睡眠~トップ・スペシャリストによる快眠コラム

連載第6回は、板東浩先生による「睡眠とホルモン~オレキシンと眠りの関係~」でした。



1.メラトニンのメカニズム ~メラトニン 睡眠リズムを 調節し
2.オレキシンのメカニズム ~オレキシン シャキッと脳を 覚醒し
3.もうひとつの睡眠・覚醒システム ~実際は 3つのシステム 調整系
4.良い眠りを得るために ~両ホルモン 協力しあって 良いリズム




今回のおすすめ動画・音楽


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【トップ・スペシャリスト プロフィール】


板東浩


医学博士 日本統合医療学会四国支部長

徳島県糖質制限研究会代表 ​ 徳島大学卒業、ECFMG資格取得後、米国でfamily medicineを臨床研修。専門領域はアンチエイジング、糖質制限、音楽療法、スポーツ医学など。アイススケート選手として国体出場(1999 ~ 2003)。第9回日本音楽療法学会大会長(2009)。第3回ヨーロッパ国際ピアノコンクール(EIPIC)in Japan銀賞(2012)。日本プライマリ・ケア連合学会大会長(2017、高松)。 糖尿病関係の英文医学雑誌4誌のEditor-in-Chief(編集長,2020)。著書30冊以上、印刷物2,000以上、英語論文300以上。「新老人の会」徳島代表。 公式サイト:https://pianomed.org/


 

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