極上の睡眠~トップ・スペシャリストによる快眠コラム
連載第6回:トップ・スペシャリスト

板東浩
医学博士
日本統合医療学会四国支部長
徳島県糖質制限研究会代表

あなたは、気持ちよく寝られたらいいな、と思いませんか?
本シリーズでは、快眠のコツについてお話しています。
その背景として、睡眠と覚醒はどのような仕組みになっているのでしょうか。
4月のコラムでは
5月には
触れました。
まず、簡単にこれらの復習をしたいと思います。
-目次-
1.メラトニンのメカニズム ~メラトニン 睡眠リズムを 調節し

私たちの頭の中には、小さな「松果体」があり、 ここから「メラトニン」というホルモンが分泌されています。 その血中濃度を調べますと、夜の20-22時ごろから急上昇して、身体にある体内時計を調節してくれているのです。 つまり身体を昼間は活動体制に、夜間は休息体制に保つ役割を担うのです。
「メラトニン」…人間の体内リズムを24時間周期に調整してくれる
人間は地球上で24時間の周期で生活していますね。 もし、人を時計がない真っ暗な洞窟で何週間も生活させると、そのリズムは24時間ではなく25時間となるのです。この現象を、フリーラン(free run)と呼びます。 実は、メラトニンが調節して、24時間に合わせてくれているというワケ。

症例カルテ
睡眠・覚醒の周期が24時間から25時間にずれてしまう
著者が以前に担当した患者は、睡眠・覚醒リズムが25時間の周期でした。 図をご覧ください。
図1は24時間の睡眠リズムですが、図2は25時間の睡眠リズムのため、 毎日1時間ずつ、睡眠覚醒リズムがずれていることがわかります。 これは、専門用語で難しいのですが、「非24時間睡眠覚醒症候群」という状態なのです。
2.オレキシンのメカニズム ~オレキシン シャキッと脳を 覚醒し

大脳下部には、視床下部という大切な領域があります。
食欲や、体温、睡眠、自律神経の中枢となります。
ここから「オレキシン」というホルモンが分泌されており、睡眠と覚醒の働きに深く関わっています。

映画でたとえると、組織からの指令が録音されたテープレコーダーで
007に届けられる状況と同じです。
その指令はすぐに消えてしまいますが、受け取った007はシャキッとして覚醒し
多角的に頭を働かせて仕事をこなすというワケ。
もし、指令がこなければ、刺激がなく眠ってしまうかもしれません。
そのオレキシンを刺激させる3大要素があります。
①栄養状態で空腹という刺激
②体内時計で朝になったという刺激
③心理状態で気持ちが高ぶったという刺激
これらの刺激を受けるとオレキシン分泌が増えて、覚醒の状態を保持するのです。
下図のように、ヤジロベエのようにうまくバランスを保っています。

逆にオレキシン分泌が減ると、覚醒→睡眠の方向に進むことに。
これに関連して、誰もが日常で経験していることがあるのです。
美味しいご馳走を食べ過ぎると、その後眠気が襲ってきますね。
これはオレキシンの仕業ともいえましょう。
食事に含まれる糖質によって血糖値が上昇すると、脳脊髄液の中のグルコース濃度も上昇することに。
すると、オレキシンを作動させるニューロンの活動が一時的に弱まるため、
眠たくなってしまうというワケです。
3.もうひとつの睡眠・覚醒システム
~実際は 3つのシステム 調整系
ここまで、睡眠と覚醒について、
①体内時計系のメラトニン
②覚醒調節計のオレキシン系
についてお話してきました。
もう一つ、
③恒常性調節系
というホルモンも関わっています。

少々難しいことで恐縮ですが、
睡眠中枢をコントロールしている「GABA作動性ニューロン」が働いているのです。
3者の関係性を示した図をご覧ください。

このように、睡眠と覚醒が切りかわるときには、 これらのホルモンがバランスを保ちながら誘導してくれています。 良い夢をみるように、快眠に誘ってくれているといえましょう。

子守歌のような曲として、ブラームスが作曲した「眠りの精」が知られてきました。 昔から、眠りの妖精が砂を子供の眼にかけると、快眠に誘われるとされてきます。 心を癒す音楽に心身を抱かれて、良い夢がみられるといいですね。
4.良い眠りを得るために
~両ホルモン 協力しあって 良いリズム
みなさまの日々の生活で、昼間に活動し、夜間にぐっすり寝ることができるのも、
これらのメカニズムが働いてくれているからです。
ただ、現代社会では、あまりにも多くのストレスが降りかかってくるため、
多くの人々が睡眠障害で悩んでいます。
本来は、規則正しい生活習慣として適切な食事・運動・睡眠を日々続けるのが理想ですが、
現実にはそう簡単ではありません。
必要な場合には、関連する薬剤も使われているので、活用できます。
しかし、心身ともに健やかに働くという点で、
音楽という薬「音薬」をうまく活用するのがベストといえましょう。
※音楽が眠りにもたらす効果については、第1回コラムを参照してください。

極上の睡眠~トップ・スペシャリストによる快眠コラム
連載第6回は、板東浩先生による「睡眠とホルモン~オレキシンと眠りの関係~」でした。
1.メラトニンのメカニズム ~メラトニン 睡眠リズムを 調節し
2.オレキシンのメカニズム ~オレキシン シャキッと脳を 覚醒し
3.もうひとつの睡眠・覚醒システム ~実際は 3つのシステム 調整系
4.良い眠りを得るために ~両ホルモン 協力しあって 良いリズム
今回のおすすめ動画・音楽
今回は、板東先生推奨の「医学博士推奨~美しく眠るピアノ」をご紹介します。
新陳代謝を促進し、美しく眠る為のヒーリングアルバムです。 コンサート・ホールにて行われた生ピアノのレコーディングによる自然の残像音が、至福の癒しの空間を生み出します。
”音薬”を活用し、すこやかな毎日をお過ごしください。
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【トップ・スペシャリスト プロフィール】
板東浩
医学博士 日本統合医療学会四国支部長
徳島県糖質制限研究会代表 徳島大学卒業、ECFMG資格取得後、米国でfamily medicineを臨床研修。専門領域はアンチエイジング、糖質制限、音楽療法、スポーツ医学など。アイススケート選手として国体出場(1999 ~ 2003)。第9回日本音楽療法学会大会長(2009)。第3回ヨーロッパ国際ピアノコンクール(EIPIC)in Japan銀賞(2012)。日本プライマリ・ケア連合学会大会長(2017、高松)。 糖尿病関係の英文医学雑誌4誌のEditor-in-Chief(編集長,2020)。著書30冊以上、印刷物2,000以上、英語論文300以上。「新老人の会」徳島代表。 公式サイト:https://pianomed.org/