極上の睡眠~トップ・スペシャリストによる快眠コラム
連載第8回:トップ・スペシャリスト

板東浩
医学博士
日本統合医療学会四国支部長
徳島県糖質制限研究会代表

※この記事の前編は、以下からお読みいただけます。 第7回:眠れる電車音楽の秘密(前編)~「揺らぎ」がもたらすリラクゼーション~
電車に揺られていると、不思議と眠気を感じて、ついうとうとしてしまう。 そんな経験がある方も多いのではないでしょうか。 眠気を感じている状態というのは、すなわち心身がリラックスしている状態と言い換えることができます。 「眠れる電車音楽の秘密」後編となる今回は、電車で眠くなる秘密について解き明かしてみましょう。
-目次-
1.秘訣は「揺らぎ」 ~電車から 受ける刺激で 瞑想に

若年~中高年の人が電車に乗ると、空間を快く感じることが多いようです。 いろんな理由として、レールの継目から発するほぼ規則的な音、エンジン音や車体の振動、身体が感じる加速度の力、空間移動を認知する視覚、landscape(風景)、soundscape(音景)など。 これらには各種の「揺らぎ」が内在しており、総合的な癒しがもたらされると思われます。 この心身の状況を、医学的に解説しましょう。
電車の刺激が瞑想状態を作り出す
ヒトには自律神経が備わっています。 意識しなくても身体を上手に自(みずか)ら律してくれる神経です。 交感神経と副交感神経という逆に働く両神経で、絶妙のバランスを保ちます。 交感神経は日中に身体を活動的に、逆に副交感神経は夜間に身体を休息させることに。 電車で座っているときは、安静な状況で適度な刺激により気持ちよく感じているもの。 つまり、深呼吸、ストレッチ、好きな曲をきく、ゆったりと物思いに耽ったり、瞑想したりするなど、このような行動と共通しているといえましょう。
2.鉄道豆知識 ~鉄オタは 撮鉄・乗鉄 音鉄も

鉄道愛好家は親しみをこめて「鉄道オタク」、通称「鉄オタ」と呼ばれています。 その中には、写真を撮る撮鉄(とりてつ)、乗ることが中心の乗鉄(のりてつ)が有名ですが、 列車の音やホームの駅案内、メロディ、アナウンスなどを楽しむ音鉄(おとてつ)もあるのです。

列車の音で、ガタンゴトンという音と振動は、レールの継ぎ目を通るときに発生します。 この適度な刺激は、人を和ませるパワーを有しているのです。 いろいろな駅には音楽が活用されてきました。 羽田や品川には空港チャイム、横浜には「ブルーライトヨコハマ」、久里浜駅には「秋桜」の曲が流れています。 全国各駅を尋ねると、いろいろな縁(ゆかり、えにし)に纏(まつ)わる、心を揺らす曲とめぐりあうことでしょう。
3.ドヴォルザークの新世界

「鉄道オタク」の元祖として、チェコの作曲家ドヴォルザークが有名です。 19世紀末に活躍し、クラシックとポップスの橋渡しを担いました。 代表曲の交響曲『新世界より』第二楽章には日本語詩が付けられ、『遠き山に日は落ちて』と親しまれています。 彼は幼少の頃から鉄道が大好きで、プラハ音楽学校で教鞭をとっていたときも、授業日程は鉄道の日程を基準に組んでいたほどだったのです。

51歳の時、アメリカの音楽院院長として招かれました。 新大陸で最新の鉄道を体験できるために了承したとされます。 その当時、「新世界」とはアメリカの地を指し、いろいろな展開を期待していたのです。 「遠き山に日は落ちて」の歌詞を示します。
遠き山に 日は落ちて 星は空を ちりばめぬ 今日のわざを なし終えて 心かろく 安らえば 風は涼し この夕べ いざや楽し まどいせん
最後の「まどいせん」とは、「円居せん、団居」と書いて、「まるく居並ぶこと、車座になること、親しい人たちが集まり、語り合ったりして楽しい時間を過ごすこと、団欒(だんらん)」を意味します。 なかなか、心に染み入る音楽と歌詞ですね。 聴き、歌い、そして、味わってみましょう。

4.トレ眠で 脳を休めて 活力へ
このたび、トレインに関わる電車、列車、駅、雑踏の音や人々の声など、soundscape(音景)をうまく散りばめられたアルバムが、配信とCDでリリースされました(トレ眠シリーズ)。
耳を澄ませば、子供の頃のlandscape(風景)が心の中に、沸き上がったり、蘇ってきたりするかのようです。いちど、試してみてくださいね。
極上の睡眠~トップ・スペシャリストによる快眠コラム
連載第8回は、板東浩先生による「眠れる電車音楽の秘密(後編)~電車で眠くなるのはなぜ?「揺らぎ」の秘密~」でした。
1.秘訣は「揺らぎ」 ~電車から 受ける刺激で 瞑想に
2.鉄道豆知識 ~鉄オタは 撮鉄・乗鉄 音鉄も
3.ドヴォルザークの見た”新世界”
4.トレ眠で 脳を休めて 活力へ
今回のおすすめ動画・音楽
今回コラムを執筆いただいた板東先生が監修の
医学博士監修「電車音ヒーリング」シリーズより、以下2つのアルバムをご紹介します。
電車に乗っているかのようなバーチャル体験と、落ち着いた音楽によるトレインミュージックを味わえます。
今回コラムを執筆いただいた板東先生が監修のシリーズとなります。
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【トップ・スペシャリスト プロフィール】
板東浩
医学博士 日本統合医療学会四国支部長
徳島県糖質制限研究会代表 徳島大学卒業、ECFMG資格取得後、米国でfamily medicineを臨床研修。専門領域はアンチエイジング、糖質制限、音楽療法、スポーツ医学など。アイススケート選手として国体出場(1999 ~ 2003)。第9回日本音楽療法学会大会長(2009)。第3回ヨーロッパ国際ピアノコンクール(EIPIC)in Japan銀賞(2012)。日本プライマリ・ケア連合学会大会長(2017、高松)。 糖尿病関係の英文医学雑誌4誌のEditor-in-Chief(編集長,2020)。著書30冊以上、印刷物2,000以上、英語論文300以上。「新老人の会」徳島代表。 公式サイト:https://pianomed.org/