極上の睡眠~トップ・スペシャリストによる快眠コラム
連載第13回:トップ・スペシャリスト

板東浩
医学博士
日本統合医療学会四国支部長
徳島県糖質制限研究会代表

秋~冬は、自律神経不調によって不眠に陥りやすい季節です。
睡眠のことで悩まれている方も多いのではないでしょうか。
「トップ・スペシャリストによる快眠コラム」第13回のテーマは、
睡眠薬の種類と効果・副作用についてです。
睡眠薬について知り、より良い眠りに役立ててください。
-目次-

季節は秋から冬に移ってきました。
地球温暖化のため、以前とは、自然界の変化も違ってきていますね。
かつて、秋は作物の収穫の時期であり、仕事が一段落して人々は収穫祭とか、いろいろなお祭りを楽しみにしていました。
そこには、必ず音楽や踊りがあり、1年を通して、生活のリズムがあったことでしょう。
近年は日本にも欧米の文化が紹介され、10月終わりはハロウィーン、12月に入るとクリスマスのシーズンとなり、街角にはポップな音楽が流れたりしていますね。
実は、かつて、12月の下旬は、冬至があり、その時期にお祭りがあり、年末年始の2週間をクリスマスシーズンとされていたこともありました。
ヘンデルが作曲した「ハレルヤ」コーラスもこの時期に歌われていたのです
1.睡眠薬「ハルシオン」―名前の由来はギリシャ神話!?

さて、イントロから本題へ。
冬至の頃に、心を静め、ぐっすり眠れるように、今回の話題を提供しましょう。
●Halcyon(ハルシオン)
Halcyon―風や波を静めて、穏やかな海にする不思議なパワーを有する古代ギリシャの伝説の鳥です。
この鳥Halcyon(ハルシオン)の名前から、睡眠導入剤で知られるハルシオン(Halcion)が命名されているのです。
まず、皆さまがイメージを捉えやすいように、目に見える鳥を紹介しましょう。

上の写真はかわせみです。
漢字で翡翠とも書かれるように「清流の宝石」とも呼ばれています。
次の章で、ハルシオンを含む代表的な睡眠薬の種類を見ていきましょう。
2.代表的な睡眠薬の種類―効果・原理・副作用

現在使われている睡眠薬は、大きく分けて4種類あります。
【4種類の睡眠薬】
ベンゾジアゼピン系
非ベンゾジアゼピン系
メラトニン受容体作動薬
オレキシン受容体拮抗薬
1.ベンゾジアゼピン系
ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は、脳の神経活動を全般的に抑えることで眠りやすくする薬です。日本では約50年前から使われ、種類も多く、作用の持続時間が短いものから長いものまであります。
しかし、ふらつきなどの副作用が出やすく、習慣性(依存性)があるという問題点があります。
●代表的な薬
デパス… 短時間の抗不安薬
ハルシオン… 超短時間型の睡眠薬
レンドルミン… 短時間型の睡眠薬
2.非ベンゾジアゼピン系
非ベンゾジアゼピン系は、不眠の改善作用に特化しています。
筋肉を緩めるような作用が少ないため、ベンゾジアゼピン系と比べ、ふらつきや転倒の危険性が緩和されています。
●代表的な薬
マイスリー… 超短時間型(最も多く処方・有名)
ルネスタ… 超短時間型
アモバン… 超短時間型
3.メラトニン受容体作動薬
メラトニン受容体作動薬は、体内時計の調整作用に関係するメラトニンというホルモンと同様の作用を持ちます。夜型や睡眠時間のずれの改善に効果が期待されます。
●代表的な薬…ロゼレム
詳細は、睡眠コラム第4回を参照してください。
4.オレキシン受容体拮抗薬
オレキシン受容体拮抗薬は、目覚めを促すオレキシンの作用を遮断し、眠りを促します。世界に先駆けて2014年から日本で使われ始めた、最も新しい睡眠薬です。
●代表的な薬…ベルソムラ
詳細は、睡眠コラム第5回を参照してください。
3.睡眠薬と睡眠導入剤はどう違う?

眠りに効果のある薬剤として、睡眠薬の他に睡眠導入剤、睡眠改善薬など聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
それぞれの違いを見てみましょう。
●睡眠薬
睡眠薬とは、不眠症などの治療のために医師が処方する薬のことです。
●睡眠導入剤
睡眠導入剤とは 睡眠薬のうちの一部の薬を指します。
催眠効果が早く現れたり、薬の血中濃度が早期に低下する睡眠薬のことで、寝つきが悪い人によく処方されます。
●睡眠改善薬
医師の処方箋なしに薬局で買えるものを、睡眠改善薬といいます。
たとえば、抗ヒスタミン剤の「塩酸ジフェンヒドラミン」などを主成分としています。睡眠薬に比べて簡単に手に入りますが、効果は弱く、続けて飲んでも数日~1週間で効きにくくなります。
なお、塩酸ジフェンヒドラミンは、風邪薬や鼻炎薬などの抗ヒスタミン剤として多くの薬に用いられています。かゆみなどを消失させますが、眠くなることで有名な成分でもあります。車の運転前の服用など、市販薬を飲む際には成分をしっかりと確認しましょう。
4.睡眠薬雑学コーナー ハルシオンの伝説とカワセミ

●ハルシオンの伝説
ハルシオンの伝説について、さらに詳しく見てみましょう。
ギリシャ神話で、風の神アイオロスの娘アルキュオネ(Alcyone)は,夫が旅に出た後に帰らぬ人となったことを知らず無事を祈り続けていました。可哀そうに感じた眠りの神ヒュプノス(Hypnos)は,息子で夢の神モルペウス(Morpheus)に命じて,夢の中で夫の死を告げさせました。すると彼女は嘆き悲しみ海に身を投げてしまうことに。
この悲劇を哀れに思った海の神ポセイドンは,二人をカワセミ(halcyon=ハルシオン)に変え、夫婦は仲睦まじく暮らしたといいます。
以上から、かわせみは「冬至の頃,波風を鎮めるとされる伝説上の鳥」と言われます。
なぜ冬至の頃なのでしょうか。これにも理由があります。
冬の季節で、冬至の前後7日間、14日間は嵐が起こらない時期で平穏です。それは、父親アイオロスが風の神様として、風を抑え、波を落ち着かせ、安全な天候にしているから。
この時期に、娘のアルキュオネの化身であるカワセミが卵を産み、浜辺に巣を作り、若い雛を育てることができます。
ここから、平和な時期、幸運な休憩などのイメージも示唆されてきました。

なお、「川蝉」という漢字は以前からの当て字です。
川にいる背が美しい鳥なので「川背美」と書いたり、光があたると、背の色が緑色に見えるので「翡翠」と書くこともあります。
カワセミのオスはメスと出会った場合、捕えた魚をメスにプレゼント。この行動は「求愛給餌」と呼ばれます。メスが受け取るとカップルが成立したことに。
これは人の場合には、はたして当て嵌まるものなのかどうか!?
これから寒い時節となりますね。
どうか、魅力溢れる物語や音楽に触れ、
身体はゆっくり、心はゆったりと。
昼間は意義深い生活を、
夜はsound sleepを目指してくださいませ。
極上の睡眠~トップ・スペシャリストによる快眠コラム
連載第13回は、板東浩先生による「睡眠薬の種類と効果|原理と副作用|睡眠導入剤とどう違う?|ハルシオンの名前の由来」でした。
1.睡眠薬「ハルシオン」―名前の由来はギリシャ神話!?
2.代表的な睡眠薬の種類―効果・原理・副作用
3.睡眠薬と睡眠導入剤はどう違う?
4.睡眠薬雑学コーナー ハルシオンの伝説とカワセミ
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【トップ・スペシャリスト プロフィール】
板東浩
医学博士 日本統合医療学会四国支部長
徳島県糖質制限研究会代表 徳島大学卒業、ECFMG資格取得後、米国でfamily medicineを臨床研修。専門領域はアンチエイジング、糖質制限、音楽療法、スポーツ医学など。アイススケート選手として国体出場(1999 ~ 2003)。第9回日本音楽療法学会大会長(2009)。第3回ヨーロッパ国際ピアノコンクール(EIPIC)in Japan銀賞(2012)。日本プライマリ・ケア連合学会大会長(2017、高松)。 糖尿病関係の英文医学雑誌4誌のEditor-in-Chief(編集長,2020)。著書30冊以上、印刷物2,000以上、英語論文300以上。「新老人の会」徳島代表。 公式サイト:https://pianomed.org/